土曜日

手ブレ補正を搭載した10倍ズームのスイバル機

レンズが動くこと。これは初期デジカメのトレンドで、回転式レンズがデジカメの代名詞だった。その後は液晶モニターが動くバリアングル式も普及したが、近年は薄型コンパクトの全盛時代となって、レンズ、もしくは液晶モニターが別個に動く方が少数派となった。

 その中で貴重なスイバル構造を持つ現行機種が、「COOLPIX S10」である。この構造の特徴は、フラットな形状で収納できること。いわゆる「カメラらしい」といわれる構造(箱形のボディに突き出たレンズ)は、容積の数値以上に感じるほど、バッグの中で場所を取るものだ。その点、COOLPIX S10の収納性は良い。10倍ズームという高倍率機種ながら、背広のポケットにも十分入るし、女性のポーチでも内容物の隙間にでも押し込めるだろう。携帯性にすぐれた10倍ズーム構造といえる。

 スイバル構造のよさは携帯性のみではない。アングルの自由さというメリットも大きい。ローアングルはもちろん、ハイアングルの撮影でも大いに威力を発揮する。回転角度は270度。下にある被写体を真上から撮影することもできる。回転部にはクリックストップが90度ごとに付いており、基本的には水平か垂直かの角度で使用するわけだが、液晶モニターが見えにくいような場合でも、常に見やすい角度に調整できるのもスイバルの特徴だ。

 レンズは35mm判の画角で焦点距離38?380mm相当、明るさは広角端から望遠端までF3.5。スイバル構造のおかげで、特殊なレンズ構造を使わなくてもコンパクトに収まっており、レンズにも余裕があるのだろう。望遠にしてもコントラストは高く、画質はなかなか優秀である。ワイド側のF3.5は並だが、テレ端でF3.5は明るい。以前、ニコンが発売した手ブレ補正付き10倍ズーム機「COOLPIX 8800」は、35?350mm相当の10倍ズームレンズを搭載し、テレ端はF5.2だった。画質はともかくとして、S10の方がシャッタースピードで1段分は明るいレンズでブレが少ないと言えるだろう。それでいて旧モデルの「COOLPIX S4」になかったVR(手ブレ補正機構)を備えている。

 ただしこのレンズ、個体差の可能性もあるが、テスト機においてはテレ側でかなり内面反射と思われる影響が出ており、逆光での撮影に問題が発生した。ワイド側でもゴーストの発生などは大きい方ではないだろうか。描写力そのものは優秀だが、思わぬところでフレアが入ってしまうことがある。個体差ではなく一般的に起きることであるならば、専用フードのようなアクセサリーが欲しいところだ。

 撮像素子は、1/2.5型の600万画素CCD。この秋のトレンドとしては1/2.5型は720万画素になってきており、なぜ撮像素子を600万画素にしたのかは不思議である。ただし、600万画素でも700万画素でも、画素数による過不足は無いといって良い。

 実際に撮影してみると、600万画素に留めたおかげなのか、VRが搭載されたためなのか、その他の技術改良のおかげなのか、決まったときの画質は実に素晴らしいものがある。一瞬驚くようなシャープな画像が得られたりする。階調性も良く、白トビも少なく、場面によっては一眼レフと言っても通用するだけの画質の良さを見せる。

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