金曜日

写真は文化 進化するデジカメ

デジタルカメラは携帯電話に次ぐ生活必需品となりつつある。高級機から一般ユーザー向けまでカバーする世界的なトップメーカーの責任者に聞いた。

デジタル一眼レフが好調です。読売新聞の写真部でも、アテネ五輪を機にキヤノンへの乗り換えが進んでいます。

岩下 知徳 いわした・とものり
キヤノン・イメージコミュニケーション事業本部長・取締役
勝った、負けたは言えませんが、キヤノンの技術的な強みは3つです。1つは光を取り入れるレンズ。光学メーカーから出発したからこの部分は強い。2つ目は、光を電気信号に変換するCMOSセンサーです。高感度でもノイズが少ないセンサーの開発に成功しました。そして、電気信号を絵にする画像処理エンジン。これら3つの要素がそれぞれ光った技術で、きちんと連携している。入力から絵作り、出力まで全体の流れを見ているからいい絵に仕上がるのです。

キヤノンのデジタル一眼レフは、プロ向けから、アマチュア向けにいたるピラミッド構造を重視していますよね。

岩下 その通りです。プロ用、ハイアマチュア向け、エントリーという構造は大切です。プロ向けのカメラで培った技術をピラミッドの下に下ろしていくのが、我が社の戦略です。厳しく、難しい状況で鍛えられたカメラの使い勝手やノウハウを、一般のお客様に広げていくと喜ばれます。カメラの道具としての完成度を高くするためには、プロ用の機種が必要なのです。

その手法は自動車メーカーがF1で技術的な到達点をきわめるのと似ています。キヤノンは昔からモータースポーツにも力を入れていますが。

岩下 写真の基本は2つあります。美しい物を撮るのと、素晴らしい瞬間を切り取ること。レーシングカーの動きを止めるのは、時の流れを止めること。大きな挑戦です。

ユーザーによって、求める写真と機能は違います。多彩な商品を抱えていて、どのようにバランスをとるのかは難しい問題だと思いますが。

岩下 コンパクトデジカメなら、よく見えない富士山もきちんと見えるような絵作りがいい。プロ向けは、忠実な再現にふった方がいい。一眼レフのEOS5Dからは、お客様が被写体や環境に合わせて絵作りを選べるピクチャースタイルというソフトを導入しました。スタンダード、ポートレート、風景、ニュートラル、忠実設定、モノクロ。6種の中から最適なスタイルを選べます。「重い、大きい、高い」という三重苦のある一眼レフに対して、コンパクトデジカメはコンパクトであるところに最大の意味があります。一眼レフはいい絵を撮るのに徹していますが、値段やサイズも大きい。コンパクトはその逆を走っている。どちらがいいかと言うと、どちらもいい。お客様が選ぶことです。

2006年12月27日 読売新聞